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【オーランド1の暇人日記から】 | ||
第二弾 「セント・オーガスティン紀行」 | ||
朝7時半、いわし雲が、うっすらと朝日にスクリーンをかけている。 今日は片道、1時間50分ほどのドライブである。 オーランドから、インターステイツ4号線(通称I-4)を東にとり、95号線(通称I-95)を北に辿ると、セント・オーガスティンの標識に出会う。 小さな港町。 人口1万2千人ほどの、田舎町。 それが、アメリカ最古の町、セント・オーガスティンである。 歴史に乏しいアメリカにあって、唯一、歴史を売り物にしている町と言えよう。 アメリカ最古の砦、最古の家、最古の小学校、最古の薬屋、最古の・・・・・・・。
ライオン橋を渡って街に入ると、アメリカ最古の砦、サン・マルコスがすぐ眼に入る。 海をうかがうように建つこの砦は、この町「一番の目玉」だろう。 入場料を払って中に入ると、広い中庭に面していくつもの部屋があり、それぞれに、歴史や、うかがわせる物等が、陳列してある。 が、私のような者にとっては、はっきり言って興味の外と言う思いがある。 いきなり石段を、のぼって砦の上に立つ。 海風がそよぐ。 爽快! 実に爽快である。 風に吹かれただけで、歴史に触れたような気がするから不思議だ。 意味もなく"ざまぁみろ"と言う気持ちにもなる。 | ||
セント・オーガスティンは、鉄道王と呼ばれた希代の大立者、ヘンリー・フラグラーが、その拠点としたことでも知られている。 この町には、今も、その面影が色濃く残っている。 街の中でも、ひときわ高くそびえ、異彩を放つフラグラー大学は、もともとヘンリー・フラグラーがホテルとして、建設したものだそうだ。 それを、1968年に約50億円もの巨費をかけて、大学に改装したと言う。 にもかかわらず、全米でも十指に入る安い授業料、と言うから、関係者の金銭感覚は、1世紀ぐらいずれているのかもしれない。 ともあれ、中に入って息を呑んだ。 この床は・・・・・・、この柱は・・・・・・、あの窓は・・・・・・、 言葉にならないのだから、文字にもならない。 桁外れの金持ちが"金に飽かして物を作るとこうなる"と、言う決定的な見本が、そこにあった。 ホテル時代は大広間だったろうと思える部屋が、いまは食堂になっている。 そこには、木製で四人掛けのイスとテーブルが、60〜70セットほどもあろうか。 それが、すべて当時の、ティファニー作品だと言う。 ったく、毎日ここで食事をしている、この学生達は、実に生意気だ。 ちなみに、その食堂を囲む高窓のステンドグラスも、み〜んなティファニーだと。 なんだか、胸やけがしてくる。 | ||
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この町の、北のはずれに"ファウンテェン オブ ユース"と言う歴史的観光スポットがある。 直訳すると「若さの泉」とか「若さを保つ泉」となるが、現地の日本人社会では、受けを狙ってか「若返りの泉」と呼んでいる。 その由来は、1513年に、はじめてこの地を踏んだスペイン人、ポンセ・デ・リオンにある。 当時、この辺りに住んでいた、セミノール・インディアンを見たポンセ・デ・リオンは、その若さと、たくましさに驚き、その原因は、彼らの飲んでいるこの泉にある、と結論付けたと言う。 しかし、セミノール・インディアンも、素をただせば、2万年ほど前にアジアから渡ってきた東洋人なのだ。 結構いい歳になっても、酒を飲むたびに歳を聞かれ、その都度、身分証明書を見せなければならない、我々アメリカに住む東洋人に言わせれば、「若く見えて、あたり前だ!」 それが、裸足に腰巻一丁で、海岸と言わず、ジャングルと言わず、走り回るのだから、きっと、たくましくも見えた事だろう。 つい半年ほど前に、ここに来た時も、この泉の水を飲んだが、あまりのまずさに、2、3日食欲が無くなってしまった。 今日もせっかく来たのだからと、覚悟を決めて飲んでみると、何の事はない。 ごく普通の"まずい水"として飲めるではないか。 聞いてみると、以前飲んでいた泉の水は、衛生局からクレームが付いた為、現在はポンプで一旦タンクに汲み上げ、更に、ろ過しているのだそうだ。 以前、まずさを我慢して、有難がって飲んでいたあの水は、「いったい何だったんだろう」と、思ってしまう。 ここでは他にも、フィルムを使ってアメリカやフロリダの、歴史や由来などを教えたり、全米1古いと、折り紙付のプラネタリュウムを使い、当時の人々が如何にして方向を間違えず、大西洋を行き来していたのかを説明したりする。 なかなか教育的だが、インチキ臭い観光スポットのような気がしないでもない。 | ||
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町の中心部、オールド・タウンのセント・ジョージ・ストリートに、"コロンビア"と言うレストランがある。 セント・オーガスティンに来たときは、大抵ここに立ち寄る。 いつも、コーヒーと南米風の料理を、一品注文する。 味と値段はそこそこだが、雰囲気がいい。 この手のレストランにしては、粗末と思えるドアを引いて中に入ると、広い客溜まりの一番奥に、若い案内嬢がいる。 その辺の、学生のアルバイトか。 係りのウエイトレスは、背筋こそ伸びているが、もう50歳に手の届く大ベテランだろう。 あまり愛想がいいので、つい歳を聞いたら、59歳だと言われ、ちょっと驚いた。 このウエイトレスは、ついでに、さっきの案内嬢の歳も教えてくれた。 30歳で子供が二人だと。 おしゃべりな女だ。 ん? ちょっと待てよ。 えっ―――!!?? ひょっとして、この辺の水は・・・・・・・・・・・・。 | ||
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